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機械式駐車場の平面化が増えている背景とメリット・デメリット

時代の流れとともに大きくなった自家用車
数十年前に建てられた機械式駐車場の課題の多くは、収容できない大きさの車種が増えてきたことではないでしょうか。従来の機械式駐車場は高さ1550㎜が主流でしたが、現在は、ミニバン・SUVなど広々とした車内を好むトレンドも関係し軽自動車でもそれ以上の高さを持つ車種が増えました。
また、1989年までは3ナンバー車の税金が高額で5ナンバー車を所有する人が圧倒的に多い時代でした。しかし現在の自動車税制の導入後は、エンジン排気量に応じた段階的な課税に変わったため、排気量が2L以下の3ナンバー車は税金が大幅に引き下げられ5ナンバー車と同額になりました。この1989年の税制改正も3ナンバー車の急増を後押ししたのです。
このような時代の流れから、収容できない車種が増加し機械式駐車場の利用率が下がる課題は現在、日本中で発生しています。機械式駐車場を有料にしているマンションにおいては、利用率が低くなり収入が減少してもメンテナンスや維持費の出費は続きます。これはマンションの管理費や修繕積立金の値上げにもつながり住民の負担となってしまいます。

マンション付帯駐車場の利用者離れ
機械式駐車場の平面化が増加している背景には、マンション新築時における駐車場の附置義務制度も関係しています。附置義務とは、一定規模以上のマンションを新築する際、近隣の路上駐車を防ぐために、マンションの世帯数に応じて駐車場の収容台数を自治体ごとに条例で義務づける制度です。また、20年ほど前には、全世帯数分の無料駐車場完備というマンションが流行しましたが、実際の入居者の自動車保有者数とはかけ離れているケースも珍しくありませんでした。さらに昨今、高齢による免許返納者が増えたことや、カーシェアの普及で必要な時だけ車を借りるというライフスタイルへの変化、都心では公共交通機関の充実など、これらの背景から自家用車の保有率は低下し、今後も集合住宅では、駐車場の利用率が回復する見込みは薄いと言われています。それでも機械式駐車場の維持費用は固定費として払い続けることになりますから、その課題を解決する一つの選択肢として、機械式駐車場を平面化するニーズが全国的に増えています。将来的なランニングコストを考慮したら機械式駐車場の平面化は有効手段となるでしょう。

機械式駐車場を平面化するメリットとは?
機械式駐車場は、法令により最低でも3ケ月に1回は点検が必要です。その点、平面化にすれば、機械の点検・メンテナンスにかかる固定費用が削減できることや、どのような自家用車も駐車できるようになることは大きなメリットです。また、平面化すれば車の乗り降りがスムーズになり、朝のラッシュ時に機械式駐車場のように順番待ちをする時間もなくなります。そして、平面駐車場の利用者が少ない場合は、駐輪場やゴミ置き場、倉庫など、車を停める用途以外にもスペースを有効活用できることもメリットになります。それまでマンションの修繕積立金が機械式駐車場の維持のためにも使われてきた場合、自家用車を保有していない住民は不満を感じていたかもしれません。その場合においては、駐車場スペースが他の目的で使われるようになれば、公平性が出て住民の満足度が高くなるでしょう。
それから、機械式駐車場は停電時にはバックアップ電源がない限り使用不可となったり、間違った使い方による事故や不注意での転落事故などの報告もありますが、平面化された駐車場でしたら住民は安心して使用できます。

機械式駐車場を平面化するデメリット
機械式駐車場を平面化するデメリットは、当然ながら駐車台数が減ることです。また、鋼製平面の場合は積載量が決まっているため、工事車両など重量のある車は止められません。鋼製平面とは機械式駐車場を解体・撤去した後に、鉄骨で柱と梁を組んで、その上に床材を敷き詰める平面化工法です。鋼製平面はメッキの鋼材を使用しているため耐久年数が長くサビにも強いですが、海岸など塩害がある地域では機械式駐車場同様に定期的な塗り替えが必要になると思われます。
また、平面化後にパレットが沈んでしまうような地盤耐力の弱い場所では、工事が不可能になるケースも稀にあります。そのため機械式駐車場を平面化する際には、事前に地盤耐力の値を調べて最適な工法を検討することになります。
そしてこれは実際にあったレアなケースですが、マンションの屋内の機械式駐車場を平面化し駐輪場を設置したところ、自転車を出し入れする際に建物内に音が響いて、隣の部屋の住民から苦情が出ました。このケースではゴムマットを敷くなどの対策を行い騒音は緩和されましたが、このように屋内にある機械式駐車場が住居スペースと密接しているマンションにおいて、平面化後に別の使い方をする場合には新たな問題が発生することもあります。

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